はじき銀舎の地味日記

地味な生活を送る、冴えない男の日記

10070日目、僕は愛を知る

先週の土曜日。この日は雨が降りしきっていた。

 

 

仕事を22時前に終え、急いで帰宅。

シャワーを浴びてから、飛び出すように家を出た。

 

電車に30分揺られ、向かった先はとある駅。

この日はある方と待ち合わせをしていた。

 

それは、初めてのゲイバー体験で隣の席にいらっしゃったダンディなお兄さん(以下、Wさんとする)。

 

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ここには書いていなかったが、実はこの帰りの道中でWさんから連絡先が記載されたメモを渡されていた。

 

初めてのことで最初は戸惑ったが、ゲイバーデビューを楽しくしていただいた恩義があったため、僕は帰宅してすぐに感謝のメールを送っていた。

 

 

 

あの日から3週間程経ったある日、Wさんからメールが届いた。

 

メールの内容は、2回目のゲイバーは行ったのかという質問。それと、土曜の夜に近くに寄るため都合が良ければ新しいお店に挑戦する手伝いをさせてくれないか、という誘いだった。

 

僕は、素直に嬉しかった。

先日訪れたゲイバーであれば、もう気負いすることなく再訪できるだろう。だが、行ったことのないお店に1人で行くのにはやはり勇気が要る。

ただ、経験豊富であろうWさんと一緒であればお任せしてついていけば大丈夫だ、という考えがあった。

 

僕はWさんのお誘いに対して承諾のメールを送った。

 

 

 

その後、当日を楽しみにしながら待っていた僕に、一つの疑問が浮かぶ。

 

もしかしてもしかすると、そういった行為に誘われてしまうこともあるのかな?という疑問。

 

実際、"職場を出るのが早くても22時になるがそれでも良いか"という内容の文面を返信すると、"遅い方が都合が良い"と返ってきた。

 

そうすると、終電の時間はあっという間に過ぎてしまうから、朝まで呑み明かすコースかそれ以外の手段で始発を待つしかない。

 

ただ、ゲイバーデビューしたてで、自分以外のゲイの方に直接会ったのも1ヶ月前が初めてというアマの僕は、まだこの界隈のことには詳しくない。

でも、僕なんか眼中に無いだろうしそんな展開にはならないだろう、と半ば結論を出していたが、何故だろう、"まさか"があってもWさんであれば受け容れてもいいな、と思っていた。

 

この時点で僕の恋心は脈打っていたのかもしれない。

 

 

 

当日の出会いの場面に戻る。

 

 

駅で再会を果たし、軽い談笑をしながら、Wさんが下調べで良さそうだと思ったという一軒目へ。

 

店内へ一歩足を踏み入れた僕は驚いた。

 

先日のお店が静かにしっぽりな雰囲気だったのに対し、ワイワイガヤガヤ、とにかく賑やかだった。(土曜の夜ということもあったのだろうが。)

加えて、お店の方・お客さんの大半が熊系のワイルドな風貌の方だった。

 

一瞬で「超細身の自分は完全に場違いだな」と萎縮したが、Wさんと一緒という安心感を全身に受け止めながら席に座った。

焼酎を呑みながらWさん、お店の方と楽しく話して過ごした。

2時間くらい経った頃、次のお店に行ってみようかと言われたので、僕は頷いてお店を出た。

 

そして、二軒目へ。二軒目もWさんが事前にリサーチしてくださっていたお店。

店内はほぼ満席だったが、ガラリと変わって比較的静かだった。

 

一軒目と同様に、Wさん、お店の方と会話をして楽しい時間を過ごすことができた。

 

 

やはり、ゲイバーはゲイだということを隠さずに過ごすことのできる特別な"異空間"だ。

 

"異空間"という表現を誤解してほしくないから追記するが、隠れゲイにとっては"何にも支配されず縛られない、本来あるべき心持ちで居られる数少ない場"という意味だ。

 

 

 

二軒目を出たあたりから、僕は結構酔いが回っていて、記憶がない箇所が所々ある。

 

 

ということで、ここからは僕の目と脳が認識しているコマ送りのような景色だ。

夢かと思うような現(うつつ)だ。

 

僕とWさんはタクシーに乗り込んだ。

 

着いた先はとあるホテルだった。

 

部屋に入ってから、Wさんがシャワーを浴び、その後に続いて僕もシャワーを浴びた。

 

ベッドに入ると間も無くして寝落ちした。

 

ふと目を開けると、Wさんが僕のベッドの傍に立っていた。

その直後、Wさんは寝ている僕の上に覆い被さってきた…。

 

 

 

 

翌朝、目と酔いが覚めた僕は起き上がって既に起きていたWさんを見るなり、何故か笑ってしまった。

何故笑ったのか今でも自分が不思議で仕方がない。

 

普段寝起きの悪い自分が気持ち良く目覚めることができたから?

それとも、今まで味わってこなかった"幸福感"に包まれていたから?

きっと後者だろう。

 

 

 

この後それぞれ仕事だった僕らはすぐにホテルを出て、最寄りの駅に向かった。

駅までの道中での会話は他愛もない話で、お互いに昨夜の深い話をすることはなく別れた。

「では、また。」と握手して。

 

 

 

若干の二日酔いで体調が万全ではなかったが、電車の中で前夜の出来事を思い返していた。

 

果たして、これで良かったんだろうか。

 

いや、後悔はしてないし、寧ろこれで良かった。

 

 

今後Wさんとの関係がどうなっていくのかが自分自身気になるが、それは自分で切り拓いていくしかない。

 

 

 

 

この世に生を受けてから10070日目の出来事。

これまでで最も濃厚な一夜であったことは疑いの余地も無い。