多情多感…感受性が強く、物事の情趣を深く感じること。
以前、TBS系列で「『全盲の僕が弁護士になった理由』〜実話に基づく感動サスペンス!〜」というドラマが放送された。
実在の全盲弁護士・大胡田誠氏の同名著書を原案にした、この2時間のスペシャルドラマが放送されたのは2014年12月。
3年以上前の作品だが、僕はこのドラマが大好きで、HDDに録画してるものをたまに観返す。
大胡田さん(ドラマでの役名は大河内)を演じる主演は松坂桃李さん。
全盲を演じるにあたり、物語に説得力をもたせるために、大胡田さんの自宅にお邪魔して所作を見て演技に活かしたらしい。
松坂さんはどんな役柄も演じることのできる素晴らしい役者さんだと思う。
先日、松坂さん主演で公開中の映画「不能犯」を観に行ったが、その作品で演じる殺人犯の不気味さには感嘆した。
世間的には"イケメン俳優"というカテゴリで一躍有名になったかもしれないが、僕は松坂さんのことを、"超がつく程の一流の役者さん"だと思っている。
そんな俳優界のスターと僕の年齢がほぼ変わらないと知った時はびっくりと同時に愕然とした。どうしてこうも違うのか、と。
ドラマの話に戻る。
サスペンスなので、メインで描かれる事件の真犯人は最後に明らかになる訳だが、2度目以降はもちろん犯人を知った状態で観ることになる。
それでも、僕はこのドラマを何度も観てしまう。
何故だろう?と思い、その理由を考えてみた。すると、1つの特徴に気付いた。
それは、作中に出てくる登場人物の感情表現が豊かだということ。ドラマだから、役者さんが喜怒哀楽を表現するのは当然なのだが、大袈裟ではなく自然で、移入させられるような表現が随所に感じられるのだ。
あくまで自己分析にすぎないが、僕は喜怒哀楽の表現力が乏しい気がする。
特に、ポジティブな感情である"喜"と"楽"は最近あまり公で露にしてないような。
何だろう、"人間らしさ"という表現で合ってるだろうか?それを周りに表現することが、未だにどこか恥ずかしい。
僕は昔から、街でよく目にする大学生のノリみたいな、周囲を気にせず通路を塞いで盛り上がる団体が嫌いだ。
でも、これは自分が味わってくることの無かった、"ないものねだり"による嫉妬が大部分を占めるせいなのかもしれない、と感じ始めた。
結局は他人が楽しくしている様を見て、憧憬の念を抱いていたのかもしれない。
冒頭の多情多感。
「全盲の僕が〜」では、無実の罪を着せられる山西(演じているのは俳優の太賀さん)の無実が裁判の場で証明される。
その後号泣し、大河内に"ありがとうございます…。"と2回声を漏らすシーンがある。
僕は毎回そのシーンで涙腺が緩む。
感受性に乏しい僕でも、心を動かされる。
人目を憚らず感情を爆発させることが、時には美しいということを教えてもらった。
良好な人付き合いをしていくには、時には周りを頼ったり弱い部分を見せる"人間らしさ"を示していってもいいのかもしれない。社会を上手く渡り歩くためにも。